訪問時期:長野に住んでいた頃
現在は北海道に住んでいるが、その前は縁あって長野に20年近く暮らしていた。松本城にはもちろん何度も足を運んだことがあって、今回はその時の写真を見つけてきた。当時は新しく買ったカメラで桜を撮るのに夢中になっていて、お堀の近くに植えられた桜を延々と撮っていた記憶がある。天守閣にも登ったので、そこから見た景色や、駅前で感じた街の雰囲気も含めて振り返ってみたい。
国宝・松本城について
松本城は長野県松本市にある平城で、黒漆塗りの外壁から「烏城」とも呼ばれている。天守は現存する日本の城の中でも古い部類に入るとされ、大天守・乾小天守・渡櫓・辰巳附櫓・月見櫓の5棟が国宝に指定されている。もともとは小笠原氏が築いた「深志城」が前身とされ、1590年に石川数正が入城したのち、数正・康長父子の代に天守が築かれたとされている。その後、松平直政の代に辰巳附櫓と月見櫓が増築されたと言われている。江戸時代には戸田家が城主を務めた時期が長く続いたとされ、今も城には戸田家に伝わる品々が残っているという。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 長野県松本市丸の内4-1 |
| 築城 | 1504年、小笠原氏が「深志城」として築城したとされる |
| 天守構造 | 連結式・複合連結式(五重六階) |
| 国の指定 | 天守5棟が国宝 |
| 桜の時期 | 例年4月上旬〜4月中旬、約300本 |
駅前で感じた、古さと新しさが同居する街並み
城に着く前、駅から歩いている時点で松本の街並みに目を奪われた。古い建物と新しい建物が混在しているのだけれど、それが雑多な印象にならず、むしろ全体にどこかレトロな空気が漂っているのが不思議だった。長野に住んでいた頃、県庁所在地は長野市だったけれど、自分の印象としては松本の方が長野市より有名な街に感じていた。駅前を歩いているだけで、古い商店と新しい建物が自然に混ざり合っている様子が伝わってきて、そのレトロな雰囲気も、松本という街を好きになった理由の一つだったと思う。
お堀沿いの桜並木を歩く
まず目に入ったのが、石垣に沿ってずらりと並んだ桜だった。思っていたよりずっとボリュームがあって、堀の水面まで枝が伸びているのが印象的だった。曇り空だったのが少し惜しかったけれど、それでも見応えは十分だった。石垣の黒っぽい色合いと桜の淡いピンクのコントラストも、写真に収めていて飽きなかった。
歩きながら、新しいカメラで花のアップも撮ってみた。ピントを合わせるのに苦戦しながらも、花びら一枚一枚の色の濃淡が写せた時は嬉しかった。青空が背景に入った瞬間を狙って、何枚も撮り直した覚えがある。
少し進むと、堀の水面に花びらがびっしり浮いている場所があった。桜のトンネルのようになっていて、写真を撮る手が止まらなかった。水面の色と花びらの白さのコントラストも印象的だった。
天守へ、枝垂れ桜の庭を抜けて
少し歩くと、木々の隙間から黒い天守が見えてきた。手前の桜と背景の山がちょうど重なって、松本らしい景色だと思った。山がまだ雪をかぶっているように見えて、春らしさと冬の名残が同時にある景色だった。
天守の正面に出ると、その大きさに改めて驚いた。庭の刈り込まれた木々の向こうにそびえる黒い建物は、写真で見るのとはやっぱり違う迫力があった。周りには同じように写真を撮る観光客が大勢いて、人気の高さを実感した。
入口付近では、枝垂れ桜が門の建物にかかるように咲いていた。観光客も多く、賑やかな雰囲気の中を天守へ向かって歩いた。
急な階段を上り、天守から見た赤い橋
調べてみたところ、天守内部の階段は最大で約61度の斜度があるとされていて、実際に上ってみても手すりを使わないと厳しいくらい急だった。途中の階には火縄銃や甲冑の展示もあり、上りながら見学する形になっていた。
上っている途中、軒下の瓦や梁を見上げると、木組みの複雑さがよくわかった。急な階段の合間に、こういう部分をじっくり見られたのも良かった。屋根が幾重にも重なっている様子は、下から見ているだけでは気づけなかった構造だと思う。
そして天守から見下ろした景色がこの日の一番のお目当てだった。堀にかかる朱塗りの太鼓橋が、黒い天守と対照的でとても目立っていた。曇りがちな空の下でも、赤色がはっきり浮かび上がっていて、思わずシャッターを切った。
軒先の瓦の向こうに、柳の新緑と桜が並んでいるのも見えた。堀端でシートを広げて休んでいる人たちの姿もあり、のどかな春の一場面だった。
反対側からは、天守の下に広がる庭園や、そこを歩く人たちの様子が見えた。高いところから見下ろす松本の街並みも、なかなか見る機会がない景色だと思う。
展示の見やすさと、これまで巡ったお城との比較
天守2階の展示スペースには、赤羽通重・か代子夫妻から寄贈された火縄銃コレクションが並んでいて、思っていたよりも本格的な展示だった。自分はこれまで、日本に現存する天守閣を持つお城を全て回っている。そのため、松本城の展示が特別ずば抜けてすごいとまでは感じなかったのだが、他のお城と比べて展示スペースが十分に確保されていて、見やすかったのは覚えている。急な階段を上りながらの見学は体力を使うけれど、各階でしっかり足を止めて見られる余裕があったのは、松本城ならではだったと思う。展示品を一つひとつ見て回れる分、階段の疲れも忘れられた。
せっかくなので、調べた宝物についても表にまとめておく。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 火縄銃コレクション | 赤羽通重・か代子夫妻の寄贈、141挺のうち一部を常設展示 |
| 甲冑・武具 | 戸田家伝来とされる刀剣・弓矢などを含む |
| 古文書 | 徳川吉宗の朱印状、戸田家の書状・絵図など |
| 工芸品 | 松竹梅桐紋蒔絵乗物(戸田家伝来とされる) |
| 壁の断面資料 | 修理時に切り取られた実物(厚さ約29cm) |
見上げた桜と松本城
天守を下りたあと、外から見上げるとまた印象が変わった。枝垂れ桜の枝が垂れ下がる先に黒い天守がそびえていて、上りながら見ていたのとは違う迫力があった。桜の花越しに見る天守は、内部から見た時よりも柔らかい印象だった。
最後にもう一枚、桜越しに天守を撮った写真が残っていた。花に囲まれた城というのは、何度見ても飽きない景色だと思う。
まとめ
長野に住んでいた頃、松本城には何度か足を運んだけれど、この時ほど桜が印象に残っている回はなかった気がする。新しいカメラを買ったばかりで、堀沿いの桜を夢中で撮っていたのを覚えている。天守から見下ろした赤い橋の景色も、実際に上ってみないとわからない眺めだった。
松本は県庁所在地ではないけれど、自分の中では長野市より有名な街に感じていた。駅前の古さと新しさが同居したレトロな街並みも、松本という場所を印象深くしている要素の一つだったと思う。現存天守を巡ってきた自分にとって、展示の規模自体は特別ではなくても、見やすさという点で印象に残るお城だった。あの街並みと、黒い天守に桜が重なる景色は、今でもはっきり思い出せる。